ぼんやりとした手触り

日記のようなもの

2017/11/29

 ああ、君よ、見えないのか。

 ゼミ室に降り積もっていく、真っ黒な沈黙を。

 「いいですね」という先生の言葉が、形を変えて迫ってくる。

 マズい発表をした者には、刺々しい蛍光色の黄色を、

 良い発表をした者には、カステラのような柔らかな黄色を、帯びて、

 「いいですね」という言葉は、私たちの沈黙の中を通り過ぎる。

 

 レポートを褒められるたびに、舌に広がる焦げ臭いニラの苦み。

 斜め前の女が、調子に乗りやがってと青い息を吐いて大あくび。

 右横の男が、むかつくと濁った緑の舌打ちをする。

 濃くなっていく真っ黒な沈黙が、私の喉を締め上げる。

 

 ゲコゲコと、カエルのように鳴いたら楽か。楽だ。楽だろう。

 でも、ないたところで仕方がないから、黙って焦げ臭いニラに耐える。

 

 ああ、君よ、本当に見えないのか?

 こんなにも世界は、お気持ちで溢れているというのに!